原文(リンク)

ひとりの老人が死んだ。
みんなは老人に生き返ってほしいと願った。
だけど、願いは届かなかった。
みんなは、老人はきっとどこかに生まれ変わって、
もう僕たちとは一緒にいられないけど、
この星のどこかで、楽しく暮らしているはずだと願った。
だけど、ひとりのある男はそうは思わなかった。
ある男は、人が死んで生まれ変わるなんて、
そんな非現実的なことは、起こらないと思っていた。
ある男は、生まれ変わりを信じていなかったけど、
生まれ変わりは、ほんとうにあったのだ。
だって、世界をもっとよく眺めてみたら、それはわかる。
僕たちが住む自然界は、
げんに生まれ変わりを繰り返しているじゃないか。
母なる大地は、春に少女として生まれ、
たくさんの生命を生む。
そして、寒い冬が来たら、彼女は年老いた老婆になって、
地上を寒さで覆う。
だけど、冬が終われば、また春がやってくる。
冬の老婆だった大地は、生まれ変わって、春の乙女になる。
そしてまた大地は生命を謳歌(おうか)する。
こんなふうに、自然界そのものだって、いのちを繰り返している。
万物の母である自然がこうして生まれ変わっているのに、
そのこどもだけが輪廻しないなんてこと、あるのかな。
水を見ても、そうだ。
水は、太陽の光を受けて、海から蒸発し、雲になって、雨になって、
再び海にかえってくる。
天と地のあいだを、くるくると生まれ変わって、巡っているのだ。
僕たちは、繰り返される、まわる時間の中を生きている。
くるくる、とまわることで、終わりは始まりにつながる。
もし、どこかで人生が終わってしまっても、
まわる時間の中では、終わりと始まりがつながって、
ふたたびどこかに生まれてくる。
死んでいなくなってしまった人は、
きっと生まれ変わって、どこかで幸せな人生を送っているよ。
永遠にまわる時の中で…。